富山県富山市の福田税理士事務所の福田です。

①及び②を踏まえて、贈与契約の有効性について検討していみたいと思います。



6.未成年者を受贈者とする贈与
6-1:意思能力を有するとされる受贈者に対する贈与
原則として、有効な贈与契約と考えられます。
⇒単に権利を得、義務を免れる行為は、制限行為能力者である未成年者にとって、法定代理人の同意が不要(民法第5条1項但し書き)
⇒受贈者としての贈与契約に必要な意思能力が存するため


6-2:意思能力を有しない受贈者に対する贈与
受贈者としての贈与契約に必要な意思能力が存しないため、原則として無効



7.意思能力を有しない受贈者への贈与に対する対応(原則として無効)
7-1:未成年者の代理権を有する親権者
・財産の管理及び代表(第824条)
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
⇒親権者は財産管理等に関する法律行為を代表(代理)
⇒法定代理権に基づき、親権者が代理
⇒法律行為を行うのは親権者であり、未成年者の意思能力は不要


7-2:親権者の代理権により贈与契約が認められない事例
・親権者(第818条)
 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
⇒親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う
⇒婚姻中に共同でない法律行為(贈与契約)の場合、民法818条第3項の要件を具備しないものとして、有効な贈与契約に該当しない可能性
⇒有効でない贈与契約に基づく資産の移転が、無効とされた場合
 ①被相続人の相続財産を構成して遺産分割協議の対象
 ②相続税の申告が必要な相続財産に該当など
 の影響?



8.最後に
 生前贈与は、有効な相続対策の一つとされていますが、”なんとなく財産の移転”が、贈与契約の要件を満たさず、ヒヤリハットの事例に遭遇することも多いです。


 有効な相続対策の一つである生前贈与のうち、未成年者を受贈者とする贈与について考察してみましたが、税だけでなく、贈与契約の有効性についても、リスクを排除したいものです。


 ”生前贈与の記事を週刊誌などで見ることも多く、生前贈与をしないといけない気持ちになるのですが、生前贈与をしないといけないのですか?”
と聞かれることもありますが、生前贈与をしないといけないという法律上の義務はなく、
 ”まずは、ご自身の生活の安定の確保が大事ですよ”
と説明させて頂くことも多いですね。


 ご自身の安定した生活が最も重要なので、充分な生活資金を確保して頂き、その上で、必要に応じて、生前贈与を検討されるのが良いのでは、と、アドバイスさせて頂くことも多いですね。