富山県富山市の福田税理士事務所の福田です。

(相続対策としての)贈与を実施する場合に、実施前に
”税の前提としての有効な贈与か否か”
の確認が必要です。


この点について、大きく分けて
・契約や財産所有が出来る能力があるか否か(権利能力)
・贈与をする、もらう、など(の法律行為の結果)が判断できる能力(意思能力)
・単独で、完全に、法律行為ができる能力(行為能力)
の点からの検討が必要と考えられます。



3.未成年者と権利能力
3-1:権利能力(第3条)
私権の享有は、出生に始まる。
⇒出生から権利能力の主体となるため、贈与契約の受贈者となることが可能とされています


3-2:出生前の胎児
・損害賠償請求権に関する胎児の権利能力(第721条)
胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。

・相続に関する胎児の権利能力(第886条)
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

・相続人に関する規定の準用(第965条)
第886条及び第891条の規定は、受遺者について準用する。
⇒損害賠償請求権・相続・遺贈については、出生前の胎児にも権利能力が備わります



4.未成年者と意思能力
4-1:意思能力(民法3条の2)
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
⇒贈与契約は、当事者の意思表示の合致で成立(諾成契約)しますが、その前提となる意思能力がないと、無効※になります
(※その贈与契約は、最初から発生していないとされます)
⇒意思能力の有無について、客観的側面から検討し、意思能力を有することを前提として、贈与契約を締結する必要があります


4-2:未成年者と意思能力
”未成年者は意思能力がない
というわけでも
”未成年者は意思能力がある
というわけでもなく
”その法律行為の程度による判断”
となるとされているようです。

負担がなく単純な贈与であれば、その点の意思能力としては、6~7歳が、一つの目安と言われているようです。



5.未成年者
5-1:未成年者(成年:民法第4条)
年齢十八歳をもって、成年とする。


5-2:未成年者の法律行為(民法第5条)
 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
⇒法律の判断能力が不十分のため、行為能力が制限(制限行為能力者)
⇒(親権者・未成年後見人などの)法定代理人の同意が必要
⇒ただし、”単に権利を得、又は義務を免れる法律行為”は、未成年者単独で有効

2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
⇒法定代理人の同意無しの法律行為は(無効ではなく)取消可能

3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

<参考:未成年者の営業の許可(民法第6条)>
 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。



5-3:単に権利を得、又は義務を免れる法律行為(民法第5条第1項但し書き)
該当する例としては
・負担のない贈与
・債務免除

該当しないものとしては
・負担付き贈与・遺贈
・負担付き遺贈の放棄
・相続の単純承認・限定承認・放棄
・債務の(免除ではなく)弁済を受ける

とされています。



5-4:未成年者の法定代理人の代理権
・親権の効力:財産の管理及び代表(民法第824条)
 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
⇒代表は、代理と解釈するものとされています