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富山県富山市の福田税理士事務所の福田です。

”親から毎年同じ金額を何年にも渡って贈与を受ける場合には贈与税の問題があるのでは?”とのご心配をされる方もいらっしゃるかと思います。

これについては、昭和49年を節目として、国税側の対応が変化したとも言われています。


ところで、”暦年贈与サポートサービスを利用した場合に大丈夫なの?”という件について、国税庁からその見解が公表されたようです。





【暦年贈与サポートサービスとは!?】

このサービスは、以下の特徴があると言われています。

・暦年贈与サポートサービスの申込みは、5年分を最初の1回にのみ実施
 
・2年目以降は毎年2月上旬に贈与者に贈与契約書が郵送される
 
・この贈与契約書には”あらかじめ定期的に贈与を行うことを約していないことを贈与者及び受贈者が互いに確認した旨の記載”がされている



このサービスは、贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行い、双方合意を有する場合にのみサービス内容の提供を行います。

しかしながら、”サービス利用開始時に5年分の贈与をすると決まっていると判断される可能性が極めて少ないもののゼロではない”ということで、事前照会に至ったとも考えられます。





【問題がない理由】

国税庁は、以下の見解で差支えないとしているようです。

・申込みは贈与者が行い、当行は、贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行った上で、その双方合意による贈与契約の成立を証する贈与契約書に基づいて贈与資金の払出し・振込(預金の振替)を行う
 
・本件サービスの申込みによって贈与契約が成立するものではない
 
・本件サービスによる「贈与資金の払出し・振込(預金の振替)」は本件サービスの契約期間中の各年に締結される贈与契約の履行として行われるものであるため、本件サービスに基づき行われる贈与については、その贈与契約によって効力が生ずるものと考えられる
 
・したがって、本件サービスに基づき行われる贈与については、各年に締結される贈与契約の内容に基づき、各年の贈与として贈与税の課税が行われることとなるものと解するのが相当である
 
・あらかじめ定期的に贈与することについて贈与者・受贈者双方の合意がなされている場合でない限り、本件サービスを利用した贈与は、「定期金給付契約に関する権利」の贈与に該当するものではない



また、前提として、民法第549条《贈与》
”当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる”
にある通り、贈与者の贈与の意思表示だけなく、受贈者の贈与を受ける意思表示を必要とする双方合意で成立することについても触れられています。



”今後何年にも渡り贈与することが事前に決まっていたのかどうか”というポイントに対して、実務の判断の参考事例になるのではないでしょうか。



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