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富山県富山市の福田税理士事務所の福田です。

確定申告時には、様々な資料の準備が必要です。
(生命保険の控除証明書、住宅ローンの残高証明書、国民年金や小規模企業共済の控除証明書など、なかなか大変です)

これらの書類は、郵送後ただちに保管しておき、確定申告時に利用することになりますが、忘れてしまうと、所得控除の適用が漏れてしまいますので、注意が必要です。


とはいっても、誰でもうっかりミスはあるもので、例えば、”寄附したのにすっかり忘れてた”ということもあるかと思います。

ところで、政治団体に寄付をした場合には、”所得控除”と”税額控除”の有利なほうを選択する流れになるかと思います。

そこで、このような場合に、どのような取扱いになるかについて考えてみたいと思います。





【申告期限までに所得税の確定申告書を提出した場合】
申告期限内に所得税の確定申告書を提出した場合には、”所得控除”と”税額控除”の有利な方を選択することができます。

では、確定申告期限を過ぎた後に、”政治団体に寄附したのにすっかり忘れてた”ということに気がついた場合にどうなるかについて考えてみたいと思います。





【もうすでに確定申告書を提出していた場合】
もうすでに確定申告書をしていた場合に、”あっ、忘れてた!”と気がつく場合もあります。
この場合、気がついた時期によって、取扱いが異なることとなります。



<気がついたのが申告期限内の場合は!?>
申告期限内に気がついて、そして、申告期限内に再度提出した場合には、遅くに提出したものが有効となります。
そのため、申告期限内に気がついて、申告期限内に提出した場合には、再提出の申告書において、”所得控除”と”税額控除”の有利な方を選択することができます。



<申告期限後に気がついたら!?>
申告期限後に気がついた場合には、更正の請求という手続きによることになります。
そして、この”更正の請求”については、”申告書に記載した税額等に誤りがあった場合等”とされています。
 そこで、それぞれのケースに分けて、更正の請求の適用があるかについて検討してみたいと思います。


・その1・所得控除の適用は可能なのか!?
 概ね、申告書に記載した税額等に誤りがあった場合として、請求は受理されて減額更正となるようです。




・その2・税額控除の適用は可能なのか!?
 税額控除の適用はできないようです。
 税額控除については、条文において以下のように記載されています。

・・・確定申告書に、同項の規定による控除を受ける金額についてのその控除に関する記載があり、かつ、財務省令で定めるところにより、当該金額の計算に関する明細書、当該計算の基礎となる金額その他の事項を証する書類の添付がある場合に限り、適用する。・・・



そして、これは、当初申告要件とも呼ばれていますが、この規定がある場合には、更正の請求による適用は不可とされています。

計算に誤りがあったことは認められるが、当初申告要件が規定されている以上は、適用を受けないことを選択したのは納税者だから、更正しないということであると考えられます。
  

 

・その3・所得控除の適用を受けた後、申告期限後に税額控除の適用を受けられるのか!?

こちらについても、その2と同じく、適用を受けないことを選択したのは納税者だから、更正しないということであると考えられます。


当初申告要件については、更正の請求に関する法改正に伴いいくつか廃止されましたが、こちらについても対応が望まれるところではあります。





【申告期限後に確定申告書を提出していない人が気がついたら!?】
 
確定申告書を提出していない場合には、更正の請求とななりません。
そして、この場合には期限後申告と呼ばれるものになりますが、当初申告要件の縛りはありません。

 国税庁の質疑応答事例においても、以下の通り記載されています。
・・・どちらかの適用を受けるかの選択は確定申告(期限後申告を含みます。)において行わなければなりません。・・・



そのため、この場合においては、税額控除の適用を受けることは可能であると考えられます。

税額控除と所得控除のどちらが有利であるかは、所得税の適用税率によることも多いですが、有利選択がある以上は、事前に準備して適用を受けたいものですね。


 
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