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富山県富山市の福田税理士事務所の福田です。

今回は、代表取締役辞任後に非常勤取締役に就任した場合の役員退職金の分割支給を巡 って、納税者が勝訴した判決について、検討してみたいと思います。



【分掌変更なのに役員退職給与の分割支給が認められた事例!?】

役員の分掌変更に伴う退職給与の支給の場合については、法基通9-2-32に国税庁の方針 が示されています。

そして、この通達からは、”実質的に退職したと同様の事情にあると認められる役員へ の支給を退職給与と認める”ということから、”実際に支払ったものでないと認めない ”とする国税庁の意思も表示されているものと考えられます。
(注書きにおいても、”原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の 額は含まれない。”とされています)

そのため、複数年度に渡っての支給は問題になるケースも多い事例です。





【分掌変更の退職給与に分掌変更ではない通達が裁判で採用!?】

本件においては、退職金支払日に経費とする処理が認められました。

これは、分掌変更に関する法基通9-2-32ではなく法基通9-2-28の考え方が採用されました。

また、以下のとおり判示されました。
 
・法人税基本通達は、課税庁における法人税法の解釈基準や運用方針を明らかにするものである
 
・行政組織の内部において拘束力を持つものにすぎず、法令としての効力を有するものではない。
 
・しかしながら、租税行政が法人税基本通達に依拠して行われているという実情を勘案すれば、企業が、法人税基本通達をもしんしゃくして、企業における会計処理の方法を検討することは、それ自体至極自然なことである

・中小企業においては、企業会計原則を初めとする会計基準よりも、法人税法上の計算処理に依拠して企業会計を行っているような中小企業との関係においては、本件通達ただし書に依拠した支給年度損金経理は、一般に公正妥当な会計慣行の一つであるというべきである。



役員退職金の実務処理を巡っては、個別性も強く、判断に迷うことも多いですが、このような裁判例を参考にしつつ、最適な結論を導き出せるようにしたいと思います。

 

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